
ハプスブルク7番勝負 その五 キリスト哀悼対決
展覧会のオフィシャル・サポーター、「名画で読み解く ハプスブル ク家12の物語」や「怖い絵」で人気の中野京子さんと、読売新聞東京本社文化部 前田記者が展覧会出品作品から7組の作品をピックアップして対談します。今回からはおふたりも特別出演。。。
(上)ペーテル・パウル・ルーベンス
「キリスト哀悼」
1614年 ウィーン美術史美術館蔵
V.S.
(右)ルーカス・クラナッハ(父)
「聖人と寄進者のいるキリストの哀悼」
1515年頃 ブダペスト国立西洋美術館蔵
中野 やっぱりルーベンスはうまい、と感嘆しますね。
前田 小さな絵です。しかし、かえってうまさが分かる。
中野 生気の失せた腕の感じ、すごくリアル。
前田 右脚の短縮法も破綻がない。それからクギ。
中野 本当だ。血がついていますね。
前田 しかも曲がっている。体重がかかって、曲がったんだなと思わせます。
中野 ちなみにルーベンスの裸婦って、日本では全然人気ありませんね。
前田 どうしても肉食の人たちの絵って感じがする。その意味で、これは日本人にもよさが伝わる作品じゃないかなと。得意ワザの感情表現も見事ですよね。左の方では死を確かめ、右端では天を仰いで慟哭するという風に、感情のドラマが見て取れる。
中野 その約100年前の絵がクラナッハ。衣装の襞が装飾的で美しい。
前田 大作だし、これぞ北方絵画ですよね。定型化しているようで、意外にリアル。脇腹からツーッと血が流れていたり。
中野 手前の聖人も存在感あり。リアリズムを目指してはいるんですよね。でもまだ中世的な表現から抜けきれず、重要度の低い人物は小さく描くので、どうしても漫画的に見えてしまう。
前田 リアルさの出し方が違うんでしょうね。クラナッハが細部のリアルさだとすれば、ルーベンスはどちらかと言うと臨場感のリアルさ。
中野 クラナッハの時代に、ルーベンスの絵があっても、意外に反応できなかったかもしれませんね。
前田 確かに。ルーベンスって、誰にでも分かるハリウッド映画みたいなところがありますが、それでも19世紀の人がハリウッド映画を楽しめたかどうか、ということですよね。クラナッハの精神性も捨てがたいんですが、ここはやはりルーベンスでしょうね。