
ハプスブルク7番勝負 その7 美女対決
展覧会のオフィシャル・サポーター、「名画で読み解く ハプスブル ク家12の物語」や「怖い絵」で人気の中野京子さんと、読売新聞東京本社文化部 前田記者が展覧会出品作品から7組の作品をピックアップして対談します。
最終決戦、第7弾は、お待ちかねの、「美女対決」です!
V.S.
アンドレアス・メラー「11歳の女帝マリア・テレジア」 フランツ・クサファー・ヴィンターハルター「オーストリア皇妃エリザベート」
1727年 ウィーン美術史美術館蔵 1865年 国家家財管理局 宮廷家財庫 ウィーン家具博物館蔵
前田 さて、「七番勝負」もこれで最終回。最初の「イケメン対決」ではいきなり座礁してしまいましたが、「美女対決」はびしっと行きたいものです。
中野 太ったイメージのあるマリア・テレジアですが、これはまだ若いころ。彼女は5歳のころからフランツ・シュテファンのお嫁さんになると言っていた。
前田 ませてますねえ。
中野 宮廷生活で、相手が少なかったということもあるかもしれない。でもフランツは素敵な人だったようですよ。これは11歳ですから、ますます恋していた時期。
前田 しかも聡明そう。威厳に満ちていて、後の政治的な活躍を予感させます。
中野 確かに美少女ですよね。下唇がほんのちょっぴりハプスブルク家。
前田 よく見ると、やはり“ハプスブルク顔”ですね。典型的なのは、同じく出品されているルドルフ2世。もはや頭の形がナスビか何かっぽい。
中野 マリア・テレジアも、実物はもう少し下唇が目立ったかもしれません。肖像画は3割増しできれいに描くと言いますから。
前田 悲劇の皇妃エリザベートの肖像画はウィーン美術史美術館ではなく、家具博物館というところの所蔵です。オーストリアでは今もって国民的な人気があって、館内はエリザベートの資料だらけでしたが、その中心がこの巨大な肖像画。
中野 おそらく等身大ではないでしょうか。クリノリンという流行のファッションをまとっていますが、これは細身で、背が高くないと似合わない。ハイヒールをはいているんでしょうが、スタイルもいいし、姿勢もいい。
前田 ドレスの裾もおそろしく長い。しかし、そこにしのび寄るように、影がさしているんですよね。どうして、こんな風に描いたんだろう。見る側としては、その後の不吉な運命を重ねて見てしまいます。
中野 背景も暗いですね。すっきりしない空模様。
前田 ファッションだと、マリア・テレジアのウエストもすごいですね。あり得ない細さ。3割ほど細く描いているのかもしれませんが。
中野 コルセットの一種ですね。苦しいそうですよ。
前田 そこを耐え忍んで、華麗なる生涯へ歩み出すマリア・テレジアと、不幸な生涯を予感させるエリザベートという対決になりそうですね。
中野 11歳の少女と、27歳という花の盛りの女性を比べるのはちょっとかわいそうな気もしますが、絵として、エリザベートの方が好きですね。マリア・テレジアの方は一般的な宮廷肖像画にとどまっている感じがします。
前田 僕もエリザベートかなあ。この絵を見るために、家具博物館まで歩いた思い出にちなんで一票――。
というわけで、いささか脱線気味に進行した「七番勝負」も、これにて幕となります。取り上げなかった出品作の中にも、まだまだ見事な絵、面白い絵があります。できましたら、あとは会場でご堪能していただけたら幸いです。